新入園児の1学期


入園式
始業式
対面式
新入園児と親の4月
「入園おめでとう」と言われても、子どもにとっては生まれて初めて親と離れて、しかも集団生活の場に入って行くのですから、不安な気持ちでいっぱいになるのは無理もありません。 すぐに元気に遊ぶ子もいますが、お母さんから離れられずに泣いたり、緊張して固まってしまったりと様々です。 もっとも大きな声で泣いている子はまず大丈夫です。自分の不安な気持ちを思いっきり表現している。一番大変そうに見えるので、先生も真っ先に関わります。 不安な気持ちを受け止めてもらえて、安定するのも案外早いものです。
この子たちが元気に遊び始める頃、今までおとなしかった子が泣いたり、登園をしぶるようなこともおこります。また、時々どうしても自分の教室に入れず、兄姉のいる部屋、職員室、 近所の仲の良い友だちのいる部屋などを自分の居場所にすることがあります。ただこの状態がいつまでも続く訳ではありません。 そこから離れられない気持ちをわかってあげ、その子と関わりながら待っていると、子どもは次第に心が安定してきて自分の先生と友だちのいるところへ戻っていくようになります。

保育参観
内科検診
他方、親もわが子が幼稚園で元気に生活していけるだろうか、また友だちとけんかせずに
遊べるだろうかと心配です。幼稚園まで送ってきて、あるいはバス停で別れる時、泣かれてしまうと余計に心配になります。 そんな気持ちを隠して「いってらっしゃい」というのは、なかなかつらいものです。 仕事や家事をしていても、今、幼稚園でどうしているだろうかとふと不安が募ってくる…と、このように保護者の気持ちを察しています。
しかし、親と子がいつも一緒では子ども同士で育ち合うのは難しくなります。子どもが育っていくためには、子ども達が、“主体的に(自らやる気になって)活動できること”が必要です。 そして大人の不要な干渉のないところで、子ども達が主体的に活動できるところが幼稚園です。 先生は子どもにとって、色々なことを教えてくれるだけではなく、自分の活動を見守ってくれる、いざという時は助けてくれる存在です。 謂わば子どもにとっての安全基地で、これがあるから子どもは安心して色々なことにチャレンジしていくことができます。 家庭が子どもにとって大切な安全基地であることは言うまでもありませんが、育ち合っていくためには、どうしても先生と友だち(仲間)がいて、先生や仲間との遊びや様々な活動のある 幼稚園という環境が必要となります。

衣替え
小運動会
プール開き
歯科検診
4月の保育とその後
どの子も幼稚園という新しい環境を自分のものにしていく力を持っています。その力を発揮できるように援助するのが保育です。その第一歩として、まず子どもと先生の信頼関係を築くことが大切です。 泣いている子には、泣かずにはいられない子どもの気持ちに共感して関わります。おもらしした子にも同じように関わります。元気に遊んでいる子には、見守ってあげるだけで大丈夫です。 泣いている子やおもらしした子に関わる先生の姿を見て、他の子は何かあった時は自分もそうしてもらえると安心します。先生を必要としている子には必要なだけ関わります。 こうして子どもと先生の間に信頼関係が芽生えてきます。ただ、入園当初、まだ先生との信頼関係ができていない時期には、子どもは先生よりお母さんが何といっても頼りです。 子どもを預けて帰ろうとするものの、お母さんや先生が何を言ってもお母さんから離れられません。 安心させようと色々言っても、自分とお母さんを離そうとしていると察して、ますます激しく泣いて抵抗します。 子どもも必死です。お母さんとしては、そこを振り切って幼稚園に預けていくのはつらいところでしょう。しかし、その場にお母さんがいる限り、なかなか先生は子どもとの関係が作れません。 そこでひと時お母さんにも、子どもにも我慢してもらうことになります。

終業式
夏休み
子どもと先生の“信頼関係”ができて、また好きな遊びが見つかり、友だちもできてくると心が“安定”してきます。 安定してくると、今度は周りの人や物に“興味・関心”を持ち、どこに何があるか、面白いものはないか、と探索活動が始まったりします。 自己発揮できるようになり、近頃はあまりみられなくなりましたが、いたずらもするようになります。 こうして子ども達の活動はだんだん“主体的”になってきます。幼稚園が楽しくなり、生き生きとしてきます。 保育の基本は子どもが生き生きとするような生活(生きる喜びのある生活)を提供することです。 このような生活を続けていくことで、子どもの中にある「育つ力」が最もよく働いて、育つテンポは一人ひとり異なりますが、気が付いてみると子どもの中にひと言では表し得ない 色々なものが育っています。 そして2学期以降始まる様々な行事において、その成長した姿を見せてくれるようになります。

夏休み
夏期保育
新入園児と進級児
進級児は新入園児が安心して幼稚園で過ごしていく上で、とても頼りになります。
落ち着いていて、そこにいるだけでも新入園児を安心させるところがあります。特に年長児は新入園児を迎えるのをとても楽しみにしていて、わからないことがあったら教えてあげたい、 できないことがあったら手伝ってあげたい、楽しく遊べるようにしてあげたいという気持ちを持っています。登園時に先生から「新しい友だちのところに行っていいよ。」と言われると 張り切って年少・年中の教室に手伝いに行ったり、出迎えに行ったりします。 激しく泣いて「ママ、ママ」という子には思わずたじろいでしまいますが、お兄さんお姉さんらしい口調で、あまり気負った風もなく声をかけている様子には驚かされます。 困っている友だちを助ける、先生の手伝いをすることで、人の役に立つ喜びを感じ、先生や友だちに感謝されると自分が必要とされていることを実感します。自己肯定感が生まれ、保つことにつながります。 新入園児が1ヵ月程度でそれなりに安定してくるのは、先生の関わりだけでなく進級児の存在も劣らずに大きいと思います。 同様に新入園児の存在は進級児にとっても大切で、これがまさに育ち合うということなのでしょう。
子どもは他の子どもに関心を持っています。例えば、入園式でのこと。園長挨拶では、がやがやしていて話を聴いている子はほとんどいません。それは入園の頃としては、子どもの自然な姿です。 しかし、年長児の「お祝いの言葉」になると、子ども達は皆、前に立って話す年長児の方を見て、真剣に聴いています。本当に静かに聴いています。
こんな風に幼稚園での毎日の生活体験の中で、年少・年中の子どもは年長の子のすることに憧れを持つようになります。これも子ども同士の大切な育ち合いの一つです。 入園式からひと月が過ぎた頃からは、普段の生活や行事(練習も含めて)の中で子ども同士の交流がますます盛んになってきます。 その交流の中でお互いに育ち合う機会も一段と増えてくるでしょう。今後の子ども達の活動と交流の展開がどのようなものになるか、楽しみなところです。
1学期も終わりに近づく頃は先生や友だちとの色々な遊びや、活動がある園生活が子どもの中に定着して、年中組では新入園児も進級児と変わらないくらい園生活に親しんでいます。 こうして長い夏休みを迎えます。長い夏休みの間に元に戻ってしまうのでは、という心配は無用です。 夏休みは家庭で過ごす良さもありますが、同時に家庭だけでは体験できない幼稚園の魅力を確認する期間でもあります。 夏期保育の頃には「早く先生に会いたい、友だちに会いたい」という気持ちが強くなってきます。
そして、いよいよ2学期に進みます。

行事と子どもの成長

幼稚園には多くの行事がありますが、その中でも運動会・生活発表会・作品展が当園では大きな行事となっています。これらの行事を通して、子どもは様々な体験をしながら成長していきます。 もし毎日の生活を子どもの自由に任せるだけにしていたならば、片寄った体験しかできない可能性があります。ここに行事を行う意義があると考えています。
ただこれらの行事は練習や準備にある程度長い期間を必要とします。この場合、「やらされている」のではなく、子どもにとって主体的な活動になっていくことが大切です。
当園では、行事が終わった後も「リレーやろうよ」「あの曲掛けて」「役を代えてやろうよ」というように、遊びとして続いていくような行事を考えています。


中旬 運動会
◎年少
かけっこ・遊戯・「いきます!」
◎年中
かけっこ・遊戯・パラバルーン・玉入れ
◎年長
障害物・かけっこ・組立て体操・リズム体操・綱引き・全員リレー
◎その他
選抜リレー(全学年)・親子競技・保護者競技・卒業生競技運動会
運動会の練習は9月に入ってから集中的に行うのではなく、1学期から体操の時間の中で少しずつ行っていきます。6月に行う小運動会で実際に体験することで運動会に対する関心が高まります。 年長組は組立て体操、テンポの早いリズム体操、全員リレーが人気です。年中児の時からのあこがれの種目で練習にも気合いが入ります。年長にもなると体力も一段とついてきて、意欲も旺盛です。 特に全員リレーでは練習で負けると子ども同士で作戦会議をしたり、バトンの渡し方を話し合ったりします。子どもは練習も本番同様真剣です。 勝ちたい気持ちが強いほどルールを守ることの大切さもわかってきます。仲間意識も育ってきて負けても足の遅い子を責めたりせず「~ちゃん、がんばれ!」と応援します。
年中児は年長児の組立てやリレーを見て憧れるようです。自由遊びの時間に組立ての真似をしたり、リレーごっこをします。年少児はパラバルーンに興味津々で自分達もやってみたいと思うようです。
暑い季節に練習するので体調には注意して行います。
また、当園の保育方針の1つである「やる時はやる、遊ぶ時は遊ぶ」ということを大切にしています。長い時間練習せずに集中して行い、練習後のプール遊びや水遊び等と組み合わせて行っています。
なお運動会は先生や子どもだけで行うのではなく、父母も一緒になって応援したり参加することで、会場全体が熱気に包まれ、子どもも普段以上の力を発揮します。 また、父母の会役員の方々の協力も素晴らしく、当園の運動会を支えています。

下旬
生活発表会
合唱、合奏(全学年)
踊り(全学年)
レコード劇(年長)生活発表会
生活発表会も11月に入って集中的に行うのではなく、その前から少しずつ練習に入ります。楽器の選択や役決めは子どもの希望を聴いて決めていきます。 合唱も合奏も選曲が大切で子どもが取り組みやすいものを選びアレンジします。年長児では、少し難しいものにチャレンジすることがあります。
合奏は年少児はカスタネット、鈴、タンバリンだけですが、年中になると大太鼓・シンバル・トライアングル等が加わります。さらに年長になると打楽器だけでなく、 ピアニカ・鉄琴等の鍵盤楽器も加わります。 練習では子ども同士教え合う姿も見られます。合奏の形ができてきて音も揃ってくると、演奏する子ども達に熱が一段と入ってきます。
踊りは皆大好きで、覚えるのも早いです。自由遊びの時間などに「CDかけて」と言ってきたり、「練習しようよ」と練習をせがむこともあります。 年長女子の着物を着ての踊りは、普段とは違った日本の女の子らしいすがたをみせてくれます。
レコード劇も子どもは大好きで、曲が始まると自分の役だけでなく他の役も踊っています。中にはすっかり役になりきって、劇の物語の世界に入っている子もいます。
生活発表会の練習も「やる時はやる、遊ぶ時は遊ぶ」という方針から、短い時間で集中して行います。 他のクラスや学年の子どもと見せ合って、感想を聴いたりアドバイスをもらったりすることで、前より上手になったと子ども自身わかってくると、練習も意欲的になってきます。 生活発表会は実は先生もドキドキで、そんな先生に年長ともなると「先生、ピアノがんばって」と頼もしくなってきます。

中旬 作品展
個人製作(絵画・製作)
共同製作作品展
3学期になってしばらくすると、個人製作に取り組みます。絵画や製作は普段の取り組みよりも時間をかけて、また初めてのものにもチャレンジします。 この頃には年少児も理解力や先生の話を聴く態度、表現意欲が育ってきているので、よく話を聴きながら作品に取り組みます。 年中・年長組は一段と表現意欲が旺盛で普段より難しい課題にも積極的に取り組みます。
作品展の製作で子どもが一番楽しく取り組むのは共同製作です。 全体のテーマを子どもが関心を持っているもの(例えば乗り物・動物園など)の中から担任が話し合って決め、そのテーマに沿って各クラスで何を作るかを決めます。 どのように作っていくか、子どもたちと話し合います。イメージがつかめない時は、イメージを共有できるよう作り始める前に何度も話し合います。 年長組になると、材料・作り方・形・色その他について方針が決まると、作業は各グループごとに話し合って進めていきます。 年少中児とは違って、担任の役割は子どもから求められた材料を用意する程度です。 こうして作られた作品は、作品展の後は子どもたちの遊び場になります。
4月から約1年、子ども達の中に描画・製作などの表現力や意欲、理解力、話を聴く態度、話し合って決めていく力その他、色々なものが育ってきていて、それが作品展という形で表れるのだと思います。

 

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